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多嚢胞性卵巣症候群(不妊症と漢方薬)

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不妊症(漢方薬の話) / 黄体機能不全 / 高プロラクチン血症 / 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS) / 子宮内膜症 / 男性不妊 / 婦人科での不妊検査 / 不妊症の妊娠症例 /

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)とは

通常、卵巣では周期ごとに1個の卵胞が2週間ほどかけて発育し20mmほどの大きさになると排卵します。しかし、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の場合は卵胞の発育が遅く、またある程度の大きさになっても卵巣の表面が硬くなっているために排卵が起こりにくくなります。発育しても排卵できない卵胞が次々に卵巣内にたまってしまい卵巣が腫れて大きくなります。超音波エコーでみると卵巣内には直径数mmの多数の未熟な卵胞が存在するにもかかわらず本来なら排卵するはずの主席卵胞が存在しません。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、20代〜40代の女性に多く、無月経、無排卵月経、稀発月経などの排卵障害をおこしやすく不妊症の原因になります。

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と診断されても、軽度の場合は卵胞が育つのに時間はかかっても排卵することができます。排卵までに時間がかかりやすいので周期が長めになりやすいです。
また、周期ごとに卵胞の育つスピードがまちまちでいつ排卵するのか予想がつきにくいため性交のタイミングがとりにくいのも特徴です。

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)による不妊や習慣性流産には漢方薬が有効です。婦人科治療とも併用できます。 下記に多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)に有効な漢方薬を載せてありますので参考にして下さい。

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の原因

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の原因は、まだはっきりと分かっていないようですが、現在のところ内分泌異常、糖代謝異常(インスリン抵抗性)などが考えられています。

  • 内分泌異常
    脳下垂体からLH(黄体化ホルモン)とFSH(卵胞刺激ホルモン)が分泌し卵巣に働きかけ卵胞の発育を促します。しかし、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)ではLHの分泌が増えてFSHとのバランスの乱れてしまい卵胞がスムーズに発育できなくなってしまい排卵が起こりにくくなってしまいます。 排卵がおこらないと排卵をさせようとさらにLHの分泌が増えてしまいます。
  • 糖代謝異常
    インスリン抵抗性があると多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)になりやすいとされています。
    まず、 インシュリンとはすい臓から分泌されるホルモンで、ブドウ糖を血液中から細胞内に取り込ませてエネルギーとして働くようにするホルモンです。
    次に、インスリン抵抗性とはインスリンの働きが悪くなり、血液中のブドウ糖を細胞内に取り込ませることができにくくなり、より多くのインスリンが必要になる状態のことをいいます。 インシュリンの量が増加すると卵巣での男性ホルモンの産生が増加すると言われています。

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の診断基準

  • 血中ホルモン値の検査
    LH(黄体化ホルモン)がFSH(卵胞刺激ホルモン)より高くなります。正常の場合はLHがFSHより低くなります。
    テストステロン(男性ホルモン)が高くなります。
  • LH-RH負荷試験
    血中ホルモン値の検査で、LH(黄体化ホルモン)が正常範囲であっても、LH-RH負荷試験を行うことによって、LHが過剰反応し高値を示します。FSHはほぼ正常値です。
  • 卵巣の超音波エコー検診
    直径数mmの発育しきれなかった未熟な卵胞がたくさんたまり卵巣の腫大が認められます。

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の基礎体温の特徴

一相性(無月経)多嚢胞性卵巣症候群のため無月経の基礎体温表

一相性(無排卵月経)多嚢胞性卵巣症候群のため無排卵月経の基礎体温表

卵胞の発育が遅く周期が長い多嚢胞性卵巣症候群のため周期が長い基礎体温表

卵胞の発育が遅く周期が長い、高温相も不安定(黄体機能不全を併発)黄体機能不全を併発した多嚢胞性卵巣症候群の基礎体温表

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の婦人科治療

  • 排卵誘発剤(クロミッド、HMG-HCG療法など)の使用
    クロミッドなどの排卵誘発剤でFSHの分泌を増やし排卵を促し排卵日予想してタイミング療法をします。クロミッドは頚管粘液の分泌量が減ったり子宮内膜が厚くなりにくくなるという副作用がありますので様子をみながら使用します。子宮内膜が薄くなりやすい方は補血作用の漢方薬を併用すると効果的です。
    クロミッドなどの内服薬では反応がない場合は、より排卵誘発作用の強いHMG-HCG注射を用い排卵を促し排卵日予想してタイミング療法をします。多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の場合、過剰に刺激しすぎることで卵巣過剰刺激症候群(OHSS)を発症しやすいので少量からはじめて徐々に投与量を増やしていきます。 卵巣過剰刺激症候群(OHSS)による卵巣の腫れや腹水予防には利水作用の漢方薬が効果的です。
  • 糖代謝改善薬を服用します(メトフォルミンなど)
    多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の原因に糖代謝異常(インスリン抵抗性)があります。クロミッドなどの排卵誘発剤で排卵しなかった場合は糖尿病の薬であるメトフォルミン(グリコラン、メルビンなど)を併用することで排卵しやすくなることがあります。
  • 副腎皮質ホルモン(プレドニンなど)
    副腎から分泌される男性ホルモンが増加して排卵を抑制することがあります。クロミッドなどの排卵誘発剤で排卵しなかった場合は副腎皮質ホルモンであるプレドニンなどを併用することで排卵しやすくなることがあります。
  • 外科的治療(腹腔鏡下卵巣焼灼術)
    腹腔鏡でレーザーや電気メスを使用し左右の卵巣に5〜10mmの穴を20ヶ所ほど開ける治療法で排卵しやすくします。手術効果は半年〜1年とされています。

上記は妊娠希望の時の治療法です。妊娠を希望していない場合には、低用量ピルやカウフマン療法で治療していきます。


多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)に有効な漢方薬

漢方では多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)や卵巣嚢腫、チョコレート嚢腫などの嚢胞性の疾患はドロドロした不要な水分が溜まった【痰湿】や血液の流れが悪く、血液が停滞した【お血】が卵巣周囲にこびり付き卵巣の皮膜が硬くなり排卵を妨げていると考えます。多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)そのものは【痰湿】と【お血】を両方とも改善する漢方薬で効果がみられます。
30代前半で黄体機能もしっかりしていれば【痰湿+お血】を改善する漢方薬のみで妊娠しやすくなります。35歳以上であったり黄体機能が弱めの方は【痰湿+お血】に加えて【腎陽虚】を改善する漢方薬を加えることで妊娠しやすくなります。その他、高プロラクチン血症を併発している方は【痰湿+お血】に加えて【肝うつ気滞】を改善する漢方薬を加えます。このように、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は2〜3種の体質がからみあっているため漢方薬を一人一人に合わせてお飲み頂く事が必要になります。

痰湿(たんしつ)タイプ ※多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の多くは【痰湿】タイプ

《生理の特徴》
稀発月経(月経周期は長め)
月経量が少なめ
おりものが多い

《基礎体温の特徴》
低温相が長め

《全身症状》
太り気味、むくみやすい、身体が重だるい、冬は手足が冷えやすく夏は逆にほてりやすい、おりものが多い、舌に厚い苔があるなど。

《痰湿による不妊に効果的な漢方薬》
痰湿の大きな特徴は身体の余分な水なので、燥湿化痰作用の漢方薬が効果的です。
半夏やキノコ製剤を用います。
また、【痰湿】を除く燥湿化痰作用の漢方薬や利水作用の漢方薬を服用することでHMG-HCG療法時に起きやすい卵巣過剰刺激症候群(OHSS)による卵巣の腫れや腹水予防にもなります。

お血(おけつ)タイプ ※多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の多くは【お血】タイプ

《生理の特徴》
経血に血塊が混じる
経血色は暗紅色
月経痛が強い(刺すような痛み)

《基礎体温の特徴》
低温相が長め、高温相への移行がスムーズでない

《全身症状》
足先が冷えやすい、のぼせやすい、シミができやすい、しもやけができやすい、青あざができやすい、下肢静脈瘤があるなど。子宮筋腫、子宮内膜症、子宮腺筋症などが同時にある方もいます。

《お血による不妊に効果的な漢方薬》
お血の大きな特徴は血液の滞りや汚れなので、血液の流れを促進する活血化お作用の漢方薬が効果的です。丹参、牡丹皮、桃仁、紅花、三稜、我朮、田七人参などを用います。

腎陽虚(じんようきょ)タイプ ※黄体機能不全を併せ持つ場合が多い

【腎陽虚】は不妊症の方で一番多い体質です。35歳以上の方や黄体機能が弱い方は鹿茸などの温補腎陽作用の漢方薬で身体つくりをすることが大切です。

《生理の特徴の特徴》
稀発月経(月経周期は長め)
月経量が少なめ〜普通
経血色が淡い

《基礎体温の特徴》
全般に体温が低め、低温相が長め、高温相が短い、低温相と高温相の温度差が0.3度以内、高温相の途中に体温がガクッと下がる、高温相への上昇が緩やか、高温相の後半に体温が下がり始めるなど

《全身症状》
冷え症、手足腰の冷え、寒がり、疲労感、足がだるい、腰痛、むくみ、頻尿になりやすい、性欲が少ない、不正出血など。黄体機能不全が同時にある方もいます。

《腎陽虚による不妊に効果的な漢方薬》
腎陽虚の大きな特徴は冷えなので、身体を温める温補腎陽作用の漢方薬が効果的です。鹿茸(鹿の角)、紫河車、杜仲、肉従蓉、巴戟天などを用います。

肝うつ気滞(かんうつきたい)タイプ ※高プロラクチン血症を併せ持つ場合が多い

慢性的な睡眠不足、仕事の疲れ、人間関係のストレス、不妊に対するストレスなどで気の流れが滞った状態を【肝うつ気滞】といいます。普段からイライラしやすい、憂うつになりやすい、不安になりやすい方や生理前に胸が張りやすい方は【肝うつ気滞】タイプのことが多いです。

《生理の特徴》
月経周期が安定しない

《基礎体温の特徴》
体温の変動が激しい(グラフがギザギザになる)

《全身症状》
イライラ感、憂うつ感、不安感、肩こり、頭痛、月経前症候群(胸の張り、頭痛) 、ストレスがあるなど 。高プロラクチン血症が同時にある方もいます。

《肝うつ気滞による不妊に効果的な漢方薬》
肝うつ気滞の大きな特徴はストレス、疲労による気の滞りなので、ストレスを緩和して気の流れを促進する疏肝理気作用の漢方薬や炒麦芽が効果的です。


当店で漢方薬を飲んで頂いた方の妊娠症例も参考にして下さい。

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